原題:연모、英語: The King’s Affection
韓流時代劇作品『恋慕』にすっかりはまりました。
パク・ウンビン(박은빈)さん演ずる、男装のヒロイン、イ・フィ。
祖父、そして父である王の後継者として、世孫(セソン)、世子(セジャ)、王となっていくイ・フィは威厳があり実にクール。
反面、ふと見せる女性らしい表情が際立ちます。
時代劇とあって殺陣のシーンもたくさんありますが、役者さんたちの表現力だけでなく、カメラアングルや編集(なのだと思う)がスピーディーかつリアリティーのある世界を作っています。
映像がとにかく綺麗ですね。
韓流ドラマ『恋慕』の魅力を様々な視点をまとめます。
※ネタバレありなのでご注意ください。
ドラマ『恋慕』の魅力のポイント
ドラマ『恋慕』の魅力のポイントをまとめると
- 出演者の演技力の高さ
- ストーリーの展開の面白さ
- 世界観を表す映像と音楽
- 衣装の豪華さをはじめとする時代考証の確かさ
- ヒロインの人としての生き方
でしょう。
出演者の演技力の高さ
『恋慕』にはまった一番の理由は、ヒロイン、イ・フィ(タミ)を演じるパク・ウンビンさんの演技力。
前述の通り男として、世子としては人を寄せ付けない威厳があり、きりりとした面持ちながら、ふと見せる女性らしい柔らかな表情の変化が自然。彼女のほんの少しの目の表情、口元の笑みにドキドキしたり。
韓国の俳優さんをあまり知りませんが、パク・ウンビンさんの起用が大ヒットにつながった要因かもしれません。
また、イ・フィの師匠であり想い人となるチョン・ジウン役のロウン(김석우)さん。
SF9というアイドルグループのメンバーとはいえ、結ばれることのないヒロインを真剣に想う切なさと苦しみが真に迫ってくる演技。反面茶目っ気があったり、ひょうきんな一面も。
周囲の人を気遣う温かな面もありチョン・ジウンという人物の人柄を表現していましたね。
イ・フィとチョン・ジウンを取り巻く人々を演じた俳優さんの力も見逃せません。
イ・フィの従兄弟で、彼女がいつも「兄上」と呼んでいたイ・ヒョン役のナム・ユンスさん。
キム尚宮(サングン)のペク・ヒョンジュさん、ホン内官(ネグァン)のコ・ギュピルさんらの味のある芝居をする演者たちがストーリーを支えていたことも忘れてはならない点です。
ストーリー展開のハラハラとロマンスが惹きつける
生き別れの双子が偶然出会い、入れ替わったことで生まれる悲劇。
誰が味方なのか敵なのか。ハラハラするミステリアスなストーリー展開に加えて、切なく苦しいロマンスは観るものを虜にする魅力がありました。
Netflixで観た私は「えっ?次はどうなるの?」とTVの前から離れられませんでした。
全20話、一話あたり約65分もあるのに・・・。
まず日本語版で全話を4日、次に韓国語+字幕日本語で観て・・と繰り返し観るほど沼りました。
決して結ばれることのないロマンスは視聴者を惹きつけますが、なんといっても『恋慕』最大の魅了ポイントは、男装の女子が世子となりやがて王となり国を統治することでしょう。
人を寄せ付けないクールな美男子。宮廷の女官たちが黄色い声をあげていることに自分自身がかさなり、イ・フィに恋しそうになりましたから(苦笑)。
また主人公のロマンスだけでなく、宮廷の政治が丁寧に描かれているのもお話の面白さ。
お髭の悪役さんたちは底なしに悪!
食うか食われるかの駆け引き、戦いは最後までラストが見えずドキドキの連続でした。
世界観を表す映像と音楽
まるで絵画のようだ・・・と魅了されたシーンがいくつもありました。
特にヒロインが池の辺り、木漏れ日の中で水浴しているシーンは、幻想的で「なんて綺麗なの」と見惚れます。
宮廷近くの丘から、宮廷とその向こうに広がる山々を展望する場面では、イ・フィは知らない世界がずっと広がっていることを目の当たりにし、言葉にせずとも、世子として王として生きる未来になすべきこと知ったと想像できました。
ラスト。海辺にイ・フィ(この時はタミ)とチョン・ジウンが佇み、夕陽の中に浮かび上がる二人のシルエット。それだけで彼らが苦難を乗り越えて、普通の日々を送る幸せをかみしめている・・・と、視聴者も安堵できますね。
音楽もシーンごとに迫り来る危険、ほんのひととき心が温まる時間、ロマンチックにぴったり!特にキスシーンは。・・・と音楽とハラハラしたり、共にときめいたり『恋慕』の世界観を盛り上げていました。
時代考証の確かさ・豪華な衣装
時代背景は朝鮮時代という以外わかりませんが、時代考証はしっかりしているのだと思います。
宮廷物とあって豪華な衣装がたくさん。
王や世子(セジャ)、お妃の衣装に金駒刺繍、銀駒刺繍が施され、TVの画面を通しても重厚感が伝わってきました。(過去に観た韓国時代劇の中にはペラペラ感があるものも・・・)
かんざしなどの小物も拘りがあり、珊瑚や翡翠を使った高価なものであることがわかります。
金駒(きんこま)刺繍、銀駒(ぎんこま)刺繍は、柄にそって金や銀の糸を細かく刺繍する技法で明との交易で日本にもはいってきています。発祥の国はわかりませんが、明から日本へという流れから朝鮮でも取り入れられた技法と考えられますね。王様の衣装は(袞衣袍)赤いに金駒、世子は青に銀駒がほどこされています。
日本では今でも着物の製作に取り入れられています。
ドラマ『恋慕』の時代背景にあるもの
時代背景は正確にはわからないものの、朝鮮王朝時代の社会はこうであったのだろうと思われる、男女の役割、厳格な身分制度、儒教思想の浸透は物語の中から読み取れました。
『恋慕』での男女の役割
朝鮮王朝を継ぐ者は、絶対に嫡男でなければならなかったことは、当時の男女の役割でいえば当然といえるでしょう。そのために双子の兄イ・フィは世孫として宮廷に残され、妹タミは出自をふせたまま王宮の外で成長することになります。
(双子が忌み嫌わた時代であることも一因ですが)
政治を司るのは男性。
双子の母、世子嬪(セジャビン)がどんなに「殺さないでください」と叫んだところで、王命という一言で女性の願いなど聞き入れられない。
全てのことが「王命」の名のもとに決定されます。
嫁入り先も父が決め・・・的なところは、昔の日本と変わらないみたいです。
ドラマの冒頭ではイ・フィの祖父が存命だったので、父は世子、母は世子嬪です。
そしてイ・フィは世孫(セソン)。
祖父が亡くなると父が王で、母は嬪宮(ピングン)。位が変わり呼び名が変わるのでドラマ視聴中に少し混乱しました。
『恋慕』での厳格な身分制度
朝鮮王朝時代には厳格な身分制度があったことは、他の韓流時代劇でも描かれていますが、『恋慕』もその点は同じ。
王様を頂点として
- 王族
- 両班(やんばん)
- 庶民
- 奴婢(ぬひ)または奴隷
実際はもっと細分化されていたようですが、『恋慕』では上記のように分類されていました。
両班の家に生まれれば両班、庶民の家に生まれれば庶民になりますが、それ以外にも刑罰のひとつとして両班が身分を剥奪されて奴隷にされたり、政治利用されている描写もあり。
『恋慕』の中の儒教思想
儒教の教えで大切にされているのは「仁」と「礼」という以外にはあまり深くは知りません。
「仁」は一言でいえば「人を愛すること」、礼は「目上の人に対する敬意」とか。
作品中に儒者や儒教の教えがでてきますが、「人を愛する」という点ではどうなのかなぁ?と思いました。
でも「目上の人に対する敬意」は序列化された宮廷では王が頂点に君臨、次に世子・・・など身分にそって礼をつくしています。
年上の人、官位が上の人、また尊敬し師と仰ぐ人物に対しても、それは同じですね。
作品中、最も儒教が全面に出てくるのは、世子が叔父であるチャンウン君を貶めたことで、世子の廃位の問題出てくるところ。
これは儒教の教えてに背くことだから、イ・フィを世子の座から下ろし「廃位」すべきであると儒者たちが集まり「世子様を廃位にしてください、王様」と王宮の門にあつまります。
この時代儒教者の発言は政治にも影響していたのでしょう、この声に逆らえず王は世子であるイ・フィの廃位を決めます。
(ここから波乱万丈があって、イ・フィが復活。王となるのですが・・・)
ヒロインの人としての生き方
イ・フィとタミの双子の兄妹は当時の世子と世子嬪(セジャビン)の間に生まれます。
当時、双子は忌み嫌われる存在で「王命である」の一言でイ・フィは宮廷で育ち、タミは宮廷の外で出自も知らず寺へ預けられ育ちます。
そして偶然、兄である世孫と王宮の女官となったタミが出会う。
その後兄が殺害される事件が起き、母である世子嬪から「女性であることを隠し、亡くなった兄の代わりに世孫として生きろ」と、タミの意思でも選択でもない生き方を強いられ、兄の身代わりとなって男性として生きていきます。
物語の中で逆に「自由に生きろ」と王(父)に言われるシーンがありますが、「自由に生きる」ということが彼女には理解できない。「これまで私には生き方の選択などなかったから」と。
そういう生き方を強いられた彼女が、泥沼となった宮廷を立て直すために、悪のトップである外祖父(母方の祖父)に戦いを挑みます。
これは自分のまわりの大切な人達の命を救うためでもありましたが、自分の人生と命をかけて果敢に立ち向かうイ・フィの信念ある孤高な生き方は視聴者の心を打つものがありますね。
視聴中「もっと楽に生きられるのに・・・」なんて思いつつ、イ・フィを応援し、彼女に穏やかな日々を訪れることを祈らずにいられませんでした。
まっ、ラストではチョン・ジウンと寄り添い未来を見ている二人にホッとできますよ。
ドラマ『恋慕」のストーリーとしての確かさ
全20話という長編。
しかしながらストーリーに破綻なく、骨太な構成です。
ちりばめられた伏線もしっかり回収。
「あぁ、そういうことだったのか」と後で納得したり。
コミックが原作ですが、脚本がしっかりしていること、監督の力量も忘れてはならないですね。